本稿では、輸入住宅の概要や特徴について解説します。輸入住宅の基礎的な情報が知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
あなたは「輸入住宅」と聞いてなにを思い浮かべますか?海外のドラマや映画に出てくる、セレブレティな家屋やプリンセス感あふれる室内でしょうか?それとも、代官山のかわいいセレクトショップや恵比寿のおしゃれなフレンチレストランでしょうか?
例であげたイメージに「おしゃれ!カワイイ!エレガント!」と心ひかれるようなら、あなたは輸入住宅と相性が良さそうです。これから注文住宅を建てるのであれば、輸入住宅も選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。より楽しいマイホームの計画を描けると思います。
本稿では、輸入住宅のメリットだけでなくデメリットも隠さずにご紹介します。輸入住宅の建築をご検討中の方の参考になれば幸いです。
輸入住宅とは?
さっそく、輸入住宅の概要から説明していきましょう。輸入住宅の定義や歴史、特徴等について簡単にご紹介します。
輸入住宅の定義
「輸入住宅」とは、どのような住宅を指すのでしょうか?輸入建材で建てた家なら、全部「輸入住宅」と言えるのでしょうか。
じつは、輸入住宅には明確な定義がありません。ですから、業界団体や輸入住宅を提供する各建築会社によって少し認識の違いがあります。
ちなみに、一般社団法人輸入住宅産業協会は以下のように定義しています。
海外の設計思想による住宅を、資材別またはパッケージで輸入し、国内に建築する住宅
上述の定義からもわかるとおり、輸入住宅はおおむね以下のものを輸入して国内で建てる住宅、と考えていいでしょう。
- 設計思想
- デザイン
- 工法
- 一部の建築資材
では、設計思想・デザイン・工法は海外のものを利用して、建築資材(以下、建材)のみ国内のものを使った家はどうなるでしょうか。輸入住宅と呼べるのでしょうか。
厳密な定義はないものの、建材を輸入せずにつくった住宅は「輸入住宅風」の国産住宅と言えるかもしれません。
輸入住宅がむいている方、むいていない方
じつは、輸入住宅は万人ウケする住宅ではありません。では、いったいどんな人にむいていて、どんな人にむいていないのでしょうか。
まずは、輸入住宅にむいている人からご紹介しましょう。以下の方は、輸入住宅との相性が良いでしょう。
- 西洋の伝統的でエレガントな住宅が好きな方
- 外観や内装にこだわった、個性的な家を建てたい方
- 暮らしに興味があり、自宅に人を招くのが好きな方
- 夏は涼しく冬は暖かい、断熱性に優れた住宅に住みたい方
- 建物とお庭のトータルコディネートを楽しみたい方
輸入住宅の外観は、長く住み継がれることを前提にどことなく「クラシックであきがこない」意匠のものがたくさんあります。
内装も、外国人のライフスタイルやこだわりが随所から感じ取れます。そういったデザインやライフスタイルに共感する人にとっては、輸入住宅が最適でしょう。
逆に、以下の方には輸入住宅はおすすめできません。
- 狭小地に家を建てたい方
- 利便性を最重要視する方
- できるだけ安価でマイホームを手に入れたい方
後述しますが、輸入住宅の各所の寸法は「インチ・フィートモジュール」で設計します。このモジュールは国産住宅の尺モジュールやメーターモジュールより長く、家のサイズが大きくなります。
ですから、狭小地においては輸入住宅の良さが発揮されません。輸入住宅を建てるのであれば、大きめの土地を用意していただくほうがよいでしょう。
また一部の建材は、輸入している都合上、調達にコストと時間がかかります。利便性を最重要視される方や、とにかく安く家を建てたい方には、輸入住宅はあまりおすすめできません。
輸入住宅の特徴
つづいて、輸入住宅の特徴をご紹介します。特徴を知っていただくと、輸入住宅が自分に合っているのか合っていないのか、判断していただきやすくなります。
輸入住宅の特徴で特筆すべきは、以下のレベルが高いことです。
- 意匠性:外観デザインや内装が個性的
- 居住性:間取りが広く、ゆったり快適に過ごせる
- 機能性:耐久性・耐震性・耐火性に富んでいる
- 断熱性:冷暖房効率が良くなる
上述の特徴によって、一般的な国産住宅とは違う「暮らし」や「満足感」が手に入ります。
海外の住宅に「耐久性が高い」印象を持っている方もおられることでしょう。実際、建設白書(1996)によると、以下のとおり海外の住宅の平均寿命が国産住宅より長いとわかります。
- 日本 ⇒ 約26年
- アメリカ ⇒ 約44年
- イギリス ⇒ 約75年
海外の長寿命住宅は、所有者を替えながら長く引き継がれていきます。輸入住宅も、しっかりメンテナンスすれば長く住み続けられます。
輸入住宅の歴史
輸入住宅の歴史についても、簡単にふれておきましょう。輸入住宅を語るうえで外せないできごとは、以下の2つです。
1910~1914年 | あめりか屋店主・橋口信助氏がアメリカから組み立て住宅6棟と建材を持ち帰り、国内で販売 |
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1974年(昭和49年) | 建設省(現国土交通省)が「ツーバイフォー工法」の技術基準を告示化して、一般に広める |
日本で最初に建った輸入住宅は、1909年にあめりか屋店主・橋口信助氏がアメリカから持ち帰ったものだと言われています。当時の資料から、この輸入住宅はツーバイフォー住宅だったと考えられます。
海外の木造住宅は、このツーバイフォー工法やそれに似たパネル工法が主流です。これらの工法は熟練工でなくとも建てられる合理的なものですが、それまでの日本では馴染みがありませんでした。
その後、高度成長期の住宅需要の高まりを背景に、建設省がツーバイフォー工法を告示化します。このできごとにより海外の工法の認知度が高まって、輸入住宅が広がる下地になりました。
輸入住宅の種類(外観様式・内装スタイル)
つづいて、輸入住宅の個性的な外観様式や内装スタイルについてご説明します。
外観様式
輸入住宅の外観は、ひとことで言うと「伝統的でエレガントなデザイン」です。大別すると「ヨーロッパスタイル」と「北米スタイル」の2タイプにわかれます。
順番に、もう少し詳しくご紹介しましょう。
ヨーロッパスタイル
ヨーロッパスタイルの外観は素朴で重厚感があり、自然と調和します。地域によって気候や風土が大きく変わるので、その影響も色濃く表れています。
ヨーロッパの代表的なスタイルを、いくつか表にまとめてご紹介しましょう。
地域 | スタイル | 特徴 |
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北欧 | スカンジナビア様式 | スウェーデンやフィンランドなどの、寒くて長い冬を快適に暮らせるように工夫された住宅様式 |
西欧 | チューダー様式 | 勾配のある切妻屋根、梁や柱など木の構造材を外側にむき出しにしたハーフティンバー |
コッツウォルズ様式 | 映画「ハリーポッター」に出てくる町並みのような、黄土色をした石積み風の建物 | |
フレンチ様式 | 北フランスの住宅をイメージ、アイボリーやホワイトを基調とした漆喰の塗り壁 | |
プロヴァンス様式 | 南仏の住宅をイメージ、素焼きの洋瓦、漆喰の壁、テラコッタの床が特徴的 | |
南欧 | スパニッシュ様式 | 白い外壁と素焼き洋瓦の切妻屋根で明るく快活なイメージ |
イタリアネート様式 | イギリス発祥、イタリアのヴィラ風、玄関ポーチにコリント式の柱をあしらいエレガントな雰囲気 |
ヨーロッパスタイルの外観は、国産住宅でも模倣されています。プロヴァンス様式やスパニッシュ様式、チューダー様式は根強い人気があるデザインです。
北米スタイル
つづいて、北米(カナダ・アメリカ)のスタイルをご紹介しましょう。
北米スタイルの住宅は、入植者がヨーロッパから持ち込んだものをもとに発展しました。華麗で堅牢、下見張りの木製外壁やドーマー窓が特徴です。
北米スタイルの外観は、ヨーロッパのような地域性ではなく、年代による影響が強く出ています。いくつか代表的なものをご紹介しましょう。
アーリー・アメリカン様式箱型の外観、勾配がある屋根、煙突が特徴的で、入植初期に広がったポピュラーな様式 | |
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ジョージアン様式 | シンメトリを基本とするデザインとレンガ調の外壁、寄棟の屋根にドーマー窓、重厚感あり |
クイーン・アン様式八角形の塔やタレットを備え城っぽい雰囲気、本場イギリスの様式を踏襲しながら装飾を強調 |
1620年、イギリスの清教徒はアメリカ北東部のニューイングランド地方から入植を開始しました。そこで建てられた建築様式は「ニューイングランド・コロニアル様式」と呼ばれています。
いっぽう、ニューイングランドから南部に移住した人たちが建てた住宅は「サザン・コロニアル様式」と呼ばれます。これらの様式を合わせて「アーリー・アメリカン様式」と言います。
アーリー・アメリカン様式は、アメリカだけでなく日本でも人気のスタイルです。
内装(インテリア)スタイル
輸入住宅のインテリア(内装)は、国産住宅のものと雰囲気が違います。どういった特徴があるのか、表にまとめてご紹介しましょう。
サーキュラー階段 | 曲線を描いて上がっていく廻り階段、階段の形状や手すりは建物の建築様式に合わせてデザイン |
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モールディング | ドアや窓の額縁や、天井と壁の境目を隠す廻縁など、部材と部材の取り合い(境目)を美しく縁取る装飾 |
鮮やかなクロス | 日本のクロスにはないような色彩、見ているだけで楽しめるデザイン |
自然素材 | 無垢のフローリング、珪藻土の壁仕上げ、テラコッタタイル、木製サッシなどを使用 |
ベイウインドウ | 出窓(張り出し窓)のことで、長方形・多角形・弓形などいろいろな張り出し形状がある |
北米の住宅は、住むだけでなく社交の場にもなります。知人・友人を招きホームパーティーをする機会が多く、内装は見栄えがして心地よいものが好まれます。
いっぽう北欧の住宅は、心が温まるシンプルで落ち着きがあるインテリアや、鮮やかで元気が出る差し色が特徴です。寒く日照時間が短い冬を快適に過ごすための工夫が、内装にも現れています。
ちなみに、デンマークには「HYGEE (ヒュッゲ) 」という言葉があります。日常のホッと癒される居心地のいい時間や幸福感を指す言葉で、住宅にもその精神が反映されています。
輸入住宅の住み心地
さて、輸入住宅の住み心地はどうなのでしょうか。快適に暮らせるのでしょうか。
輸入住宅は、快適に暮らしたい方におすすめです。なぜ輸入住宅の住み心地がいいのか、そのひみつをご紹介しましょう。
ゆったりした空間で、居住性が高い
輸入住宅は、ゆったりした広い空間で住み心地の良さが感じられるつくりになっています。そうなる理由は、モジュール(建材の基準寸法・基本単位)にあります。
日本では尺モジュール(910mm)やメーターモジュール(1000mm)が使われます。いっぽう、欧米ではインチ・フィートモジュール(1218mm)が使われます。
この違いによって、欧米の住宅は日本の住宅より一回り大きくなります。たとえば廊下や階段の幅は、二人が行き違えるくらい広い幅になります。
なお、モジュールが違うと互換性が低くなります。ですから、輸入住宅に日本の建材を使うと、寸法が足らなかったり長すぎたりしてロスが出ます。
断熱性や気密性など、基本性能が高い
北欧や北米の冬は、北海道なみの寒さです。モジュールが大きい欧米の家はひとつひとつの室空間が広いので、高い気密性や断熱性なくして冬を快適に過ごすことができません。
これらの性能を上げるには、パネル工法やツーバイフォー工法が有効です。両工法で建て、しっかり断熱された住宅は、魔法瓶に例えられるほどの保温力を発揮します。
いっぽう日本古来の住宅は、夏の高温多湿を考慮してつくられていました。風通しが良い反面、厳寒や猛暑に弱く、現在国が欧米住宅をお手本に高気密高断熱住宅の普及を図っているところです。
- 欧米の輸入住宅 ⇒ 高気密高断熱の密閉型
- 日本古来の住宅 ⇒ 風通しがよい開放型
寒さが厳しい地域の高気密高断熱住宅は、それにともない遮音性もよくなります。冷暖房の効率もよくなるので、省エネです。
輸入住宅の耐震性
輸入住宅の耐震性はどうでしょうか。地震の国・日本でも、倒壊せずに耐えられる強度を持っているのでしょうか。
この点も心配要りません。日本の法令(耐震基準)をクリアできているのはもちろん、輸入住宅の多くが採用しているツーバイフォー工法はとても地震に強いつくりなのです。
- ツーバイフォー工法とは?
- 19世紀に北米で確立。アメリカやカナダでは、木造住宅の90%以上がツーバイフォー工法によるものだと言われている。 国産住宅では三井ハウス等が採用していて、建築棟数のシェアは12%程度。
- 角材と合板で「面」をつくり、これを屋根・床・壁に使って箱状(モノコック構造)に組みあわせる。耐久性・耐震性・耐火性に優れた住宅がつくれる工法。
一般社団法人日本ツーバイフォー協会の資料によると、ツーバイフォー住宅は阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震で「被害なし・多少の被害」が約 97%以上だったそうです。
ツーバイフォー工法の住宅は、ファイヤーストップと呼ばれる構造により高い耐火性も持っています。火災保険料が、日本の一般的な工法の半額くらいになるケースもあります。
輸入住宅のメリットとデメリット
最後に、輸入住宅のメリットとデメリットをご紹介します。まずはデメリットについてご説明したあと、メリットについて解説します。
輸入住宅のデメリット(欠点・弱点)
輸入住宅は素晴らしいところがたくさんありますが、欠点や弱点がないわけではありません。輸入住宅のデメリットもしっかり理解したうえで、建築されることをおすすめします。
輸入住宅の代表的なデメリットは、以下のとおりです。
- 狭小地にはむいていない
- 国産住宅よりややメンテナンス性が劣る
- リフォームで大胆な間取り変更ができない
- 輸入建材の中には国内基準に合わないものがある
- 高額になりやすいうえ、為替の影響を受け価格が変動する
それぞれ、もう少し説明を補足します。
狭小地にはむいていない
先述のとおり、輸入住宅はインチ・フィートモジュールを使って設計します。ですから、日本の住宅より大きくなりやすく、一般的に広い土地が必要です。
都心部や利便性が高い地域など、地価が高いエリアで輸入住宅を建てるなら、まとまった予算が必要になるでしょう。
ただし、狭い土地に建てるのが不可能なわけではありません。輸入住宅と日本の土地事情に精通した建築会社であれば、状況に合わせたプランがつくれます。
国産住宅よりややメンテナンス性が劣る
輸入住宅は海外の建築思想と工法でつくられますが、それを会得している職人が多くありません。ですから、メンテナンスは基本的に建築した会社頼りになり、それを不便と感じる方もおられるでしょう。
建材がすぐに手に入らないケースもあるので、修理に時間がかかることもあります。輸入住宅を建てたいなら、しっかりしたアフターメンテナンス体制がある会社を選ぶようにしましょう。
リフォームで大胆な間取り変更ができない
輸入住宅は、一般的な国産住宅より間取りの可変性が低くなります。(ただしこれは、国産・輸入を問わず、ツーバイフォー工法やパネル工法の住宅全般に言えることです)
輸入住宅の工法は面で構造躯体をつくるため、壊せない壁(耐力壁)が多くなります。ですから、この工法は(地震に強くなる反面)大胆な間取り変更ができません。
たとえば2つの子供部屋の間仕切壁をつくったり取ったりしたいなら、あらかじめそれを考慮したプランをつくっておく必要があります。
輸入建材の中には国内基準に合わないものがある
日本で輸入住宅を建築するなら、日本の消防法や建築基準法をクリアしなければなりません。残念ながら輸入建材の中には、そのままでは日本の法規に適合していないものもあります。
たとえば京都市のような防火基準が厳しいエリアでは、基準を満たさない屋根材や外壁材、木製サッシは使えません。防火地域や準防火地域は、ご注意ください。
モジュールの問題もあります。ほとんどの国産サッシはインチ・フィートモジュールの窓枠にはまらないので、交換したいときの選択肢が限られます。
為替の影響を受け価格が変動する
輸入住宅は多くの建材を輸入しているので、為替の影響を受けて価格が変動します。住宅は高額商品ですから、わずかな差でも数十万円、あるいは百万円以上の差額が出ます。
円高になると有利ですが、円安になると建材の調達コストが上がることは覚えておいたほうがいいでしょう。
輸入住宅のメリット(利点)
インチ・フィートモジュールで建てた輸入住宅は、一般的な日本の家より大きく開放感があります。さらに、パネル工法やツーバイフォー工法の住宅には以下のメリットもあります。
- 耐久性:風や地震による変形やねじれに強い
- 耐震性:地震で倒壊しにくい
- 断熱性:冷暖房効率が良くなる
- 気密性:隙間が少なく虫や風の侵入を防げる
- 遮音性:騒音が室内に入ってきにくく、室内の音も外に漏れにくい
- 耐火性:燃え広がりにくい
- 短工期:職人の手間賃を圧縮できる
輸入住宅は、個性的な外観や内装と数々のメリットを備えています。根強いファンがたくさんいるのも、うなずけるのではないでしょうか。
輸入住宅とは?特徴やメリット・デメリットまとめ
「輸入住宅」とは、おもに北米や北欧から「設計思想・デザイン・工法・一部の建築資材」を輸入した住宅を差します。伝統的でエレガントな外観と内装が魅力です。
輸入住宅は、おもにパネル工法やツーバイフォー工法を用いて建てます。それによって、基本性能が高く、住み心地や省エネ性に優れた住宅がつくれます。
もし輸入住宅にひかれるものを感じているなら、モデルハウスを見学しに行ってみてはいかがでしょうか。実物を見ていただくと、筆舌では表せない良さを感じていただけるでしょう。